苔の屋上緑化について

先日、苔の屋上緑化案件の技術的な構成についてお手伝いさせて頂きました。

屋上という特殊な環境において苔を良い状態で生育させるということは、庭園で上手く育てることとは別の技術を必要とします。

 

商業施設の屋上などで屋上庭園に触れる機会はあるかと思いますが、一般の人が苔の屋上緑化を目にする機会は少ないと思います。理由としては、苔やセダムといった薄層緑化は一般的に意匠を目的としておらず緑地面積対策として利用されるケースが多い為です。簡単に説明しますと、法律や条例で敷地に対して緑地として植栽を行わないといけない割合が決まっており、そこを守らないと建築物が建てられないというルールになっています。ですので、多くの場合工場や人が立ち入れない屋上などに施工されています。

今回ご協力させて頂いた現場も、緑地面積を確保する為に屋上への緑化案件でした。

屋上で苔を生育させるポイントとしては大きく①施工面の状態 ②負圧の問題 ③排水の問題 ④初期の苔の状態 の4点になります。

 

①施工面の状態

施工面は大きく分けて2種類あり、今回の様な陸屋根と金属の波板(折半)屋根があります。注意すべきは陸屋根の方になります。シート防水など経年で浮いてしまっていたり、塗膜防水が著しく劣化している場合は最初に防水面を再施工する必要があります。そういった場合だと水たまりができる箇所があったりします。水たまりができる場所に施工を行うと枯れの原因となります。

②負圧の問題

地上面では問題にはなりませんが、屋上では負圧(風に引っ張られる力)に気を付けなければなりません。苔の様な重量がない植物においては固定方法に特に気を付けなければ飛散のリスクが大きくなります。具体的な方法の一つに全面をネット等で覆い、強固なアンカーを施工面に接着し、細かいピッチでネットを固定します。また側面は風の影響を受けやすいのでアングル等で処理をします。

③排水の問題

水たまりができるような環境は論外ですが、水勾配が緩く水はけが悪い環境は注意が必要です。排水口が詰まりやすい現場も注意が必要です。

④初期の苔の状態

前述の通り、苔の屋上緑化の場合は散水などの管理を行えない環境が基本となるので自然の雨のみが頼りとなります。この際、苔のコロニーがしっかりと形成されていることが大切となります。生育が甘い苔ですと保水量が少なく乾燥時間が長くなります。

また、コロニーがしっかりと形成されていると風に対する抵抗力があるので痛むことが少ないです。

最後に屋上緑化の苔はスナゴケ(エゾスナゴケ・ナガエノスナゴケ)一択になりますが圃場での栽培された苔を使うコトがポイントです。山取りの苔は順化(ストレスを意図的に加えて強くする)が行われていないので、急激な環境の変化についていけず最初は良いのですが、悪くなる確率が高いです。特に屋上の様な過酷な環境においては顕著に現れます。

スナゴケは一般的に日向を好みますが、下の写真の様に日陰気味な場所を選んで自生するコトが多いです。圃場では強制的に日向で育てますので、同じ種類でもストレスの耐性が違うコトは想像できると思います。

(日陰の駐車場に自生するエゾスナゴケとホソウリゴケ)